労働保険徴収法ほか
○労働保険の適用・手続
会社を立ち上げ、労働者を雇い入れたいときは、事業主は、労働保険(労災保険・雇用
保険)の手続をしなければなりません。
「パートタイマーや契約社員、派遣社員は保険に入らなくてよい」という誤解が一部
にはあるようですが、雇用形態にかかわらず、一定の要件を満たせば労働保険が適用さ
れることに注意する必要があります。
1 労働保険の適用
1労災保険
労災保険は、業務上または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡等に対して保険
給付を行う制度です。保険料は、事業主が全額負担します。
労災保険は、一定の個人経営の農林水産の事業を除き、労働者を一人でも使用して
いれば強制的に適用されます。したがって、正社員、パートタイマー、アルバイトなどを
問わず、加入手続をしなければなりません。
2 雇用保険
雇用保険は、@働く人が失業した場合、A働く人について雇用の継続が困難となる事由が生じた
場合B働く人が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付(失業等給付)を行うこ
とにより、働く人の生活と雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にするなど
その就職を促進することと、あわせて雇用保険二事業として、
C失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大(雇用安定事業)、
D働く人の職業能力の開発・向上の促進(能力開発事業)を図ることを目的とする制度です。
なお、雇用保険は、労働者本人や事業主の意思にかかわりなく、加入要件※を
満たす場合には、必ず加入手続をしなければなりません。
○雇用保険の適用要件(平成20年度)
事業の種類 |
事業主負担 |
労働者負担 |
計 |
一般の事業 |
9
----
1000 |
6
---
1000 |
15
---
1000 |
農林水産・
清酒製造の
事業 |
10
---
1000 |
7
---
1000 |
17
---
1000 |
建設の事業 |
11
---
1000 |
7
---
1000 |
18
---
1000 |
|
※短時間就労者(パートタイマー)について
は次の2つの要件を満たす必要が
あります。
@1週間の所定労働時間が20時間以上で
あること。
A1年以上引き続き雇用されることが見込
まれること。 |
|
|
○労働保険の適用事業
○:強制適用 |
保険区分 |
業 種 |
個人(注1) |
法人 |
5人未満 |
5人以上 |
雇用人数に無関係 |
労災保険 |
農林水産業
(注2) |
一部任意適用 |
○ |
○ |
上記以外 |
○ |
○ |
○ |
雇用保険 |
農林水産業 |
任意適用 |
○ |
○ |
上記以外 |
○ |
○ |
○ |
|
(注1)個人とは、国、地方公共団体、法人の事業所以外の事業所
(注2)労働者を常時使用しない (年間延べ300人未満)個人経営の林業は任意適用
|
2 労働保険の成立手続
労働保険の適用事業となったときは、所轄の労働基準監督署または公共職業
安定所に、「保険関係成立届」を提出します。
そして、その年度分の労働保険料を概算保険料(保険関係が成立した日からその
年度末までに労働者に支払う賃金総額の見込額×保険料率)として申告・納付します。
また、雇用保険の適用事業となった場合は、これらのほかに、「雇用保険適用事業所設置届」
と「雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の公共職業安定所に提出しなければなりません。
○ 労働保険の成立手続(一元適用事業の場合)
3 労働保険料の申告・納付
1労災保険の年度更新
労働保険の保険料は、保険年度(4月1日〜翌月3月31日)ごとに算出します。
年度当初に概算で申告・納付し、翌年度の当初に確定申告の上清算すること
になっており、実際の手続としては、前年度の確定保険料と当年度の概算保険
料をあわせて申告・納付します。(年度更新)
平成21年度から、労働保険年度更新の申告・納付期限が、社会保険の算定
基礎届の提出期限に合わせ7月10日(提出期限:6月1日〜7月10日)となります。
2労災保険料を分割して納付することができる場合(延納)
次のいずれかの場合には、原則として、下表のとおり、労働保険料を
3回に分割して納付することができます。
(10月1日以降に成立した事業場については延納が認められません。)
@概算保険料額が40万円(労災保険が雇用保険のどちらか一方の保険関係
のみ成立している場合は20万円)以上の場合
A労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合
|
3回分割 |
4/1〜5/31までに成立した事業場 |
6/1〜9/30までに成立した事業場 |
|
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第1期 |
第2期 |
期間 |
4/1〜
7/31 |
8/1〜
11/30 |
12/1〜
3/31 |
成立した日〜
7/31 |
8/1〜
11/30 |
12/1〜
3/31 |
成立した日〜
11/30 |
12/1〜
3/31 |
納期限 |
5/20 |
8/31
(9/14) |
11/30
(12/14) |
成立した日の
翌日から50日 |
8/31
(9/14) |
11/30
(12/14) |
成立した日の
翌日から50日 |
11/30
(12/14) |
|
※( )内は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合
石綿健康被害救済に基づく一般搬出金の申告・納付
「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき、独立行政法人環境再生
保全機構が給付するのに必要な額は、国及び地方公共団体による負担、特に
石綿に関連の深い事業主か船員保険法に規定する船舶所有者)からの一般搬出金
により賄うものとされています。
石綿は、産業基盤となる施設、設備、機械等に広く使われ、事業活動を営むすべての
者が、石綿の使用により経済的利益を受けてきたと考えられることから、幅広く公平に
負担するものとして、事業を問わず一般搬出金率は、一律1000分の0.05とされました。
なお、一般搬出金は、労働保険の年度更新にあわせ申告・納付します。
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